アローラリーグ総括
はじめに
6月30日から熱闘が続いたアローラリーグも遂に終幕!サトシ君とククイ博士(もといロイヤルマスク)のエキシビションマッチもトリを飾るのにふさわしい勝負でした。
アローラリーグは、過去シリーズのリーグと比較してもかなり特殊なリーグだったと思います。以下、予選のバトルロイヤルから印象的な場面を振り返ってきます。
バトルロイヤル(129話)
アローラリーグの大きな特徴として、予選のバトルロイヤルが挙げられます。
バトルロイヤルは、アローラ地方で伝統となっているバトル形式です。ゲームや63話*1では4人のプレイヤーがリングにポケモンを繰り出していましたが、今回は規模が大きく異なります。
アローラリーグ予選の参加者総勢151名がバトルフィールドに立ち、各々が手持ちを1体繰り出して戦わせるものです。手持ちが戦闘不能になったらリタイアとなり予選敗退で、これを16人に絞り込まれるバトルが続きます。
フィールドでは、いわゆる反則行為がなく(意図的な対人攻撃くらいか?巻き込むくらいなら問題ない)ひたすらカオスなバトルが繰り広げられていました。サブタイにもある通り、バトルの様相はまんまスマブラです。
トレーナーが容赦なくダイレクトアタックに巻き込まれかねない危険なバトルの上に、島キングといえど4人で151人のバトルをどうやってジャッジするのかというツッコミどころも多々ありましたが、試みとしては斬新だったと思います。
アローラリーグ予選では、これまで見たことない戦略が垣間見えました。以下、随時紹介していきます。
仲間との結託
シンプルですが、非常に有効な手段です。どこから攻撃が飛んでくるのが分からない上に、不特定多数を相手にしなくてはならないとなれば手を組んだ方が勝ちやすいです。味方サイド同士で誤射して同士討ちなんて事態も防げますし。
メインキャラを残しつつ、参加者も一気に絞るという秀逸な選抜方法といえます。しかし、次回大会辺りでルール改定した方が、勝負としての公平性は保てそうな気がします。
漁夫の利狙い
仲間と戦って態勢が崩れた相手を仕留めにいくのもあり。こちらはリーリエが採った戦法。無論、仲間内での同士討ちは避けます。 バトルロイヤルでは単純に強い人だけでなく、手を組める仲間がいると露骨に勝ちやすいことが分かります。
ひたすら逃げ回る
バトルロイヤルは、151人の参加者が16人に絞り込まれるまで続きます。なお、他の参加者を撃破しなくてはならないなんてことはなく、勝負から逃げ回っていても最後の16人に残れば決勝ラウンドに進めます。
ひたすら戦火を避けて逃げ回るのも知恵と労力を使いますから、この辺りはロケット団の狡猾な立ち回りが効いてる印象です。
ただ、ピカチュウを見ると目の色を変えるミミッキュを連れていたために、バトルに乱入したりサトシのピカチュウに挑みかかろうとするなどハプニングもあり。この点からも、逃げ回るのにも相応の力がいるといえます。
勝負の先送り
サトシのピカチュウが攻撃を受けそうになった時、グラジオが助け舟を出して協力して他のトレーナーを撃破しています。その上で、2人は勝負を決勝トーナメントと決めて別れています。ここでもバトルロイヤルのフリーダムさが見られます。
次回大会辺りで、目が合ったら or 半径数メートル以内に接近したらバトルしなくてはならない(=勝敗をつけなくてはならない)みたいなルールにならないですかね、これ。
孤軍奮闘し勝ち上がるグズマさん
ポケモンスクール勢が手を組んだり、助け合ったりしているなかでグズマさんだけは1人で戦っていました。グズマさんに挑みかかるトレーナーがどれくらいいたかは分かりませんが、並み居る相手に単身で勝ち抜くあたり強さが伺えます。
仲間と協力するポケモンスクールの面々と、スカル団員やプルメリの間接的な支援(イリマのイーブイの足に怪我を負わせる)はあれど1人で戦っていたグズマさんが見事に対比されています。
バトルロイヤルを勝ち抜いたトレーナーは強いか
バトルロイヤルを勝ち抜いた16名は強いと言えるか。言えるとしたらなぜそう言えるか。またバトルロイヤルで敗退したトレーナーは弱いのか。
これはかなり人によって意見が分かれると思います。例えば、予選敗退したカヒリさんと勝ち抜いたマオ・リーリエが1対1のバトルをしたらどちらが勝つでしょうか。おそらくカヒリさんでしょう。しかし、勝ち抜いたのはマオ・リーリエ。
強さというものが、純粋にトレーナーの技量・ポケモンのスペックをぶつけ合うものだとしたらバトルロイヤルでは測れないことになります。では、バトルロイヤルで測れるものは何か?候補の一例として「したたかさ」が挙げられます。
バトルロイヤルは場所にもよりますが、どこから攻撃が飛んでくるか・そもそも1 vs 1のバトルとも限らないという点で強者泣かせな側面を持っています。サトシも何度か危ない場面はありましたし、実力者であろうカヒリさんは敗退しています。そのような不安定なフィールドで対策を講じて勝ち上がるしたたかさというのを測っていたのではないでしょうか?
したたかさを強さの一つとして認めるかどうかは人それぞれですが、個人的には勝ちあがったトレーナーは少なくともこのルールでは強いと考えています。「強い者が勝つのではない、勝ったものが強いのだ」というフランツ・ベッケンバウアー氏の言葉もありますし。
バトルロイヤルによる予選方式は多くのトレーナーに勝ち上がる可能性を与える一方で、純粋なバトルの実力者だけが勝ち上がるとは限らない点で博打要素も見受けられます。ククイ博士もといロイヤルマスクの夢であったアローラリーグもまだ第一回目。次回辺りでは何らかのルール改正があるかもしれません(是非見たかった…!)。
決勝トーナメント1回戦
決勝トーナメント1回戦は、バトルロイヤルを勝ち抜いた者同士による1対1のバトルです。ここからは純粋にポケモンバトルの実力がある者が勝ち上がることになります。バトルロイヤルでは仲間と協力して勝ち抜いたマオやリーリエは、この1回戦で勝負の舞台から去っています。
放映時はなぜこの2人を決勝トーナメントの舞台に上げたのか、という疑問の声もかなり見受けられましたが、ルールに則って勝ち上がりその後のステージで敗れ去ったので不満は特にありません。予選も決勝トーナメントもどちらも勝負の世界です。
また、グズマさんが6世代の女王:メガガルーラを相手に親ガルーラ・子ガルーラ・ハッサムが一直線になって攻撃し辛いように立ち回る戦法で勝利しています。トレーナーとしてのレベルが低いリーリエやマオには卑怯呼ばわりされていましたが、メガガルーラの特徴を逆手に取った立派な戦略です。
決勝トーナメント2回戦
決勝トーナメント2回戦ともなると、純粋に実力でバトルに勝った者同士の対戦なので、勝負のレベルも上がってきます。2回戦では、サトシやグズマのバトルが特に物議を醸しました。以下、順次扱っていきます。
サトシのモクロー
サトシのモクローは、ハウとのバトルにおいて居眠りしたりポンチョやフェザーダンスによる身代わり戦法を駆使して勝利しています。まず居眠りに関しては、過去にカントーセキエイ大会でサトシのゼニガメが眠り粉を受けて戦闘不能扱いされたり、リザードンが居眠りによる戦意喪失扱いされて敗退していることを引き合いにかなり批判されています。
カントーセキエイ大会の前例に照らし合わせたら今回のジャッジはおかしいか?これを考える上で、まずセキエイ大会とはアローラリーグは異なるルールによって運営されているという前提に立つべきではないでしょうか?セキエイ大会で眠り粉を受けただけで戦闘不能扱いされたのは謎が多い部分ですが、少なくともアローラリーグでは眠り状態は戦闘不能ではありません。また、モクローは起き上がった後バトルを再開してますので、戦意喪失でもありません。したがって、セキエイ大会を引き合いにモクローが卑怯呼ばわりされる筋合いはありません。
では、一度ジャッジのクチナシさんが戦闘不能のジャッジを下してから審判長のハラさんが判定を覆したことはどうか?これに関しては、まずジュナイパーがモクローを完全に戦闘不能にできなかったのは事実です。そこにクチナシさんのミスジャッジが重なってハウ君に想定外の不運な事態になったと言わざるを得ません。落ち度はジュナイパーとクチナシさんにあるため、モクローが叩かれる根拠はここにもありません。
ちなみに物言いをしたハラさんはどうか?審判長であるハラさんが誤審を見逃していては大会運営の権威に関わります。ましてや孫の勝利のために不当なジャッジを容認してしては、勝負にもハウ君にも泥を塗ることになります。ハウ君とジュナイパーにとっては理不尽極まりませんが、物言いは正しい判断だったと思います。
モクローのポンチョやフェザーダンスによる身代わり、変わらずの石を所持していることはどうなのか?これについては、ポンチョがかなり黒すれすれのグレーかと思います。ポンチョを意図的もしくは偶然回避用に使ったとしても、審判に反則のジャッジをされてない以上モクローはルール違反はしていません。これは仮説ですが、プロレスのコスチュームみたいな扱いを受けたのではないかと見ています。アローラリーグは、主催がプロレスラーなことから互いの全力を受け止めるプロレス風のバトルが目立ちます。モクローのポンチョもこのようなバトルであればトリックプレーの一つとして認められたのではないでしょうか?
フェザーダンスについては、技の運用の内なので卑怯とまではいかないと思います。変わらずの石ですが、ウォーグル相手にはかなり有効に効いてましたが、ジュナイパー戦ではむしろ足を引っ張っていたので勝利に貢献していたとは言い難いです。
モクローとサトシが批判されるような部分はポンチョくらいだと思いますが、石に足を引っ張られながらもポンチョやミスジャッジで勝ち抜いた以上、もやもやが残ったり試合展開に嫌悪感を覚える人が多いのは仕方ないといえます。
最後に立て続けに不運に見舞われたハウ君ですが、サトシのバトルが批判された一方で彼の器のデカさが光っていました。目の前で勝利を取り消されても即座に切り替え(動揺はしていたかもしれませんが)、バトルフィールドでは決して涙を見せず握手に応じる。次回大会辺りでもっと強くなってサトシにリベンジして欲しいところです。
グズマさんのバトルスタイル
決勝トーナメント2回戦でより顕著になったのが、グズマさんのバトルスタイルです。
グズマさんのバトルスタイルは、相手の動向を的確に見抜きグソクムシャのタフさを活かして押し切る傾向が強いです。ハッサムの場合は、機敏性を活かした立ち回りやとんぼ帰りなどクレバーな側面が見られます。
ギャング団のボスという立場から卑怯・悪質な手を使うイメージが強いですし、またしてもリーリエやマオなど実力・戦術理解が未熟なトレーナーからは揶揄されています。またスイレンとのバトル後に明らかになりましたが、観客からはほとんど応援されていません。
スカル団のボスという肩書きを考えれば、閉鎖的なアローラ空間で応援される余地はほぼないと思います。ただバトルにおいて反則はしておらず、メガシンカやZ技を戦略とパワーで真っ向から打ち破っているため視聴者の立場からしてみれば一定の理解・応援はできます。
アローラリーグって、プロレスみたいなところあるよね。主催たるククイ博士がプロレスラーだから、その辺の色が強い。
— Dai@ポケモン・アイカツ (@Onigohri_362) August 11, 2019
モクローが寝てもバトル続行が認められたり、グズマさんの立派な(?)戦術に観客一同静まり返るのもプロレス風バトルが暗黙のうちに望まれてるからかな。
#アニポケ
— とり。 (@pktorisky) August 11, 2019
「グズマさんの方が正々堂々戦ってる!」っていう意見が多いのに対して私は正直うーんって思った。
ポケモンカードの公式戦という競技の場で運営の手伝いをしたことあるけど…マナー悪い選手はルール違反してなくても認められんわ。前科持ちなら尚更。みんなグズマに夢持ちすぎじゃない??
ここまでグズマさんのバトルを見た結果、個人的にはプロレスのヒールに近いところがあると感じました。粗暴なところはあれど、ルールには則り戦略とパワーで勝つ。モクローの件でサトシのバトルが視聴者から批判されているのに対し、グズマさんのバトルは観客やポケモンスクールの面々から非難されています。プロレスの視点から見てもこうした両者の対戦カードは燃えるものがあります。
サトシくんのメルタンやモクローの「トンデモビックリ規格外の戦いかた」と、グズマの「ルールの範囲内だけど”ほめられたものじゃない”と言われてしまうアローラでは規格外の戦いかた」が、規格外同士で、ぶつかる流れに、どんな展開になるのか、オラはワクワクしてきました。
— 篠原 隆 (@takashi11290141) August 12, 2019
準決勝
この辺りになると、他のリーグと比べても遜色ないハードなバトルが繰り広げられています。最初にカキ vs グラジオ、次にサトシ vs グズマです。いずれも高度な駆け引きが見られますので、本編を観ることをおススメします。本記事では、サトシとグズマさんの勝負に焦点を当てます。
遂に訪れたサトシとグズマさんの因縁の一戦。最初にバトルしたときは、グズマさんが優勢でサトシが反撃に出た辺りでグソクムシャの特性:危機回避が発動して水入りとなりました。その時のククイ博士とのやり取りで、グズマさんが実は逃げているという印象を視聴者に与えています。
ククイ博士の設立したアローラリーグの表舞台に、グズマさんがルールを守ってまで乗り込んできた理由としては、ククイ博士の信念やアローラを支配する伝統の否定があると思います。それはククイ博士の面影を想起させるサトシとのバトルにおいても同じ。グズマさんにとっては、ククイ博士しか見据えてませんがサトシとのバトルを通じて自らの弱さと向き合っていきます。
ゲームにおける危機回避の仕様とは異なり、技を撃たれる直前でハッサムに交代して不利な展開にさせられたのは考え物です。しかし、それを差し引いてもグソクムシャのタフさと彼(?)の背中を見て変わったグズマさんの雄姿が目立ちます。
島巡りやZ技といったアローラの伝統を否定してきたグズマさんが、ククイ博士が作った大舞台でZ技を受けたグソクムシャの背中を見て変わる。大会を通じた成長はかなり大きいと思います。またゲーム原作の伏線も回収してくる辺り、メディア展開にも沿っています。
アニメのポケモンは、ゲームとは全く別物ですし準拠しなくてはならないなんてことはないと思います。むしろ過去の作品はもっとゲームとかけ離れていました。その中でも、アニポケサンムーン編は、3年以上かけて忠実にSM・USUMをなぞっていると思います。
サトシ vs グズマのバトルは最終的にサトシの勝利で終わりましたが、試合後の展開はエキシビションマッチに勝るとも劣らない最高のものだったと思います。グズマさんがグソクムシャに手を貸し、ハラさんが最初に拍手を送り、観客もそれに続きます。そしてククイ博士も次回大会に誘い、グズマさんは再出発。
かなり長くなりましたが、サトシとグズマさんの一戦は、単なる勝敗以上にグズマさんが新たな一歩を踏み出す一戦となりました。同時に伝統が支配している閉鎖的空間であるアローラにおいても一抹の希望を見出すことができました。
次回大会辺りで勝ち抜いたグズマさんとサトシのリターンマッチ、そしてククイ博士との大勝負が是非見たいです。
決勝
決勝の組み合わせは、サトシとグラジオ。作中トレーナーの中でも、実力は拮抗(グラジオが上回っていた?)しているため対戦カードとしても申し分ないです。
サトシとグラジオの対決は、 3度に及んでいます。いずれの勝負でもサトシはグラジオに勝つことはできず、シリーズを通じて高い壁として立ちはだかっています。
もっともグラジオ側もサトシの成長を好意的に捉えているあたり、シゲルやシンジ、シューティーといった嫌味な部分はありません。ストーリーによく絡んできて、裏で悪の組織と繋がりがないアランに近いイメージです。
決勝の3vs3のバトルでは、シルヴァディ・ルガルガンといったこれまでサトシとのバトルに出てきたポケモンの他に、モーン博士*2の手持ちだったゾロアークを加えています*3。
ルガルガンに化けていたゾロアークとピカチュウのバトルは、無限暗夜への誘いをウルトラダッシュアタックで突き進んで相討ちというアニメならではの結末を迎えます。
ピカチュウとゾロアークが引き分けに終わった後、これまでのリーグではなかった光景が見られました。すなわち、両者が談笑する光景です。他の地方リーグであれば、すぐに次のポケモンを繰り出して次のバトルが始まるところですが、互いに笑っています。
このシーンについては、描き方がまずかったと思います。露骨に時間を取る談笑シーンを使わなくても2人が全力でバトルを楽しんでいる様子を表現することはできたと思います。バトルに緩急があるのは大歓迎ですが、繋ぎの部分はテンポよくして欲しかったところです。
仕切り直して始まったラス一は、ルガルガン同士の対決になりました。これまで3回の対戦で負けてきたのはいずれもルガルガンだったので、ルガルガンで決着を付けるのが相応しいと思います。
サトシとグラジオの対決は、過去シリーズのライバルと比べると繰り出す手持ちの数が少なかったのもあり見劣りする部分があったかもしれません。また、シゲルや初期シンジみたいな超えるべき壁というほど壮大なライバルでもなかったので盛り上がりが控え目なところがありました。それでも、これまでの対戦を振り返りつつ両者の全力をぶつけ合うバトルを展開し、最後は黄昏ルガルガンのハイブリッド性能を存分に発揮してくれた点で評価できます。
アローラリーグでは、遂に決勝のバトルを制してサトシがチャンピオンになりました!過去の作品と比較されて地元のバトル大会といわれてしまう面は仕方ないですが、アローラ地方で指折りの強者に勝った結果なので立派なチャンピオンだと思います。今後は、大会の権威付けのためにも他地方からのチャレンジャーも招き入れて、アローラ特有の閉塞感を打破すると同時に大会のレベルアップも成し遂げいって欲しいです。
エキシビションマッチ
アローラリーグの初代チャンピオンとなったサトシは、ロイヤルマスクとのエキシビションマッチを行う権利を得ます(真のチャンピオン決定戦)。
しかし、直前のアクジキング乱入への対応でロイヤルマスクの仮面が剥がれて正体がククイ博士と判明してしまいました。
サトシとロイヤルマスク、もといククイ博士の対戦は6対6のフルバトルで、特にニャヒートとガオガエンを中心に進められます。ククイ博士の手持ちも徐々に明らかになりつつ一進一退の攻防はエキシビションマッチに相応しい白熱したものでした。以下、代表的なカードを扱っていきます。
ニャヒート vs ガオガエン
数多あるエキシビションマッチの対戦カードの中で、サトシ・ククイ両者が大一番に据えていた対戦カード。ニャヒートにとっては、ニャビーだった頃に敗れて以来のリベンジマッチの機会です。
またサトシ・ニャヒートはセレビィの力で一度過去のククイ博士に会っていて(博士のガオガエンはニャビー)、この邂逅が後のアローラリーグ設立の伏線となっています。
互いに譲らないバトルの果てで、双方が最後に撃ったZ技はホノオZ。過去にオーロットのオー爺から譲り受けたホノオZでぶつかり合う熱い展開になってます🔥
サトシとククイ博士のホノオZ、どっちもオー爺(オーロット)から貰ったものなんだよね…
— もりたKN@ (@morita_kn) October 13, 2019
あの出会いがあって今があるんだって思うと泣けてくる✨😭#アニポケ pic.twitter.com/AGPiBsfehk
激闘の果てにニャヒートはガオガエンに進化して立ったまま戦闘不能になりました。カプ・コケコ相手にも進化した強さを見せてもよかったのかもしれませんが、限界を超えた激闘を見せてくれたので大いに満足です。
ニャヒートのガオガエンへの進化、アローラの格闘チャンピオンであったロイヤルマスクのガオガエンを下したことでチャンピオンベルトを受け継いだ様に見えるの控えめに言って神だと思ってる#anipoke #アニポケ pic.twitter.com/cloLw02GUR
— ナシマヤ@サトピカZ (@MARSKPOKEMON) October 13, 2019
カプ・コケコ vs ピカチュウ
4週に渡ったエキシビションマッチの締めくくりはピカチュウとカプ・コケコとなりました。 アニポケサンムーン編の初期*4から登場し、サトシにZリングを渡して大試練に挑むきっかけとなっています。またグラジオ同様、ピカチュウと何度も対決しています。
サトシがアローラで大試練に挑むきっかけを作り、また幾度となくそびえ立つ壁となってきたカプ・コケコとの対決が神試合であることは火を見るよりも明らかです。詳細は、こちらの記事をご覧いただければ分かりやすいと思います。
余談ですが、サトシが1000万ボルトを放つのに使ったピカチュウZのベースはデンキZです。このZクリスタルを渡したのは他ならぬカプ・コケコです*5。
このようにアローラリーグではストーリー開始当初からの長いライバル関係が幾重にも張り巡らされていて、時には過去にも遡るほど重厚なエピソードがあって1試合1試合成立しています。アローラ地方の4つの島を軸に、サトシが人やポケモンと出会い、バトルや生活の中で積み上げてきた全てがリーグの舞台で発揮されているわけです。この辺りからもストーリー構成の秀逸さを感じました!
対戦カードの操作・決着の引き延ばし
初代アローラチャンピオンとなったサトシと主催であるククイ博士とのバトルは、単純な勝敗以上に、誰が誰を相手にするかといった対戦カードの組み合わせをかなり重視していたと思います。
ガオガエンとニャヒートのぶつかり合いから始まり、双方他のポケモンとのバトルは最低限にして体力を温存しています。ガオガエン vs ルガルガンの場面では、瀕死寸前まで追い込まれたとしても倒すことはできそうです。それでも一旦は引いて後続のウォーグルに任せるあたり、ニャヒートとの大一番を重視していることが伺えました。
ただエンペルトがメルメタルに倒された場面や、モクローがフシギバナに負けた場面では対抗要員として出動しています。その後は再び相まみえるまで控えに戻るなど双方が暗黙の了解のもとバトルの対戦カードを操作していたと言えます。
アローラリーグ、特にエキシビションマッチのプロレス風展開を象徴する場面はこちら。ククイ博士が観客にカプ・コケコのバトルを見たいか問う場面です。バトルとしては、対戦相手のサトシ君の了承があればおそらくカプ・コケコをフィールドに送ることは可能でしょう。しかし、観客はどう思うか・守り神の乱入によるバトルを受け入れてくれるかを確認しています。ククイ博士もといロイヤルマスクにとって、参加者はもちろん観戦者も一体となって作り上げるのがアローラリーグであると伺えます。
サトシ vs ククイのバトルはエキシビションマッチなので、単純な勝敗以上に試合の盛り上がりも大事な要素です。順番に繰り出していってラス一同士で決戦よりも、切札を温存し、最高に盛り上がる場面で全力をぶつけ合う。それなりに双方が仕組んだカードであったにも関わらず、盛り上がりの場面が多くあったため、構成の巧さに唸らされた次第です。
このような構成・試合展開は一歩間違えれば間延びしてしまったりおそれもあります。また、ククイ博士の当初の6体目(何だったんでしょうか?ペリッパー説が比較的有力)がカプ・コケコによって出番を奪われています。カプ・コケコとピカチュウの最終決戦はアニポケサンムーン史上最高の作画と迫力で描かれたため不満はありませんが、唯一挙げるとしたら6体目の扱いです。
サンムーン編開始当初から物語に絡み、Zクリスタルを授け、サトシのピカチュウと幾度となく絡んでるカプ・コケコとの一戦以上に盛り上がるラストバトル*6は思いつきませんが、6体目が犠牲となった点は少し考えさせられました。
アローラリーグの特異性
アローラリーグは、これまで開催された他のポケモンリーグ(カントー・ジョウト・ホウエン・シンオウ・イッシュ・カロス)とはかなり異なる部分が多いです。特に顕著なのは地域性だと思われます。
地域色
アローラ地方は、4つの島*7からなる地方です。地域に根差した交流があるといえば聞こえはいいですが、同時に島の流儀や伝統色がかなり強く支配しているとも言えます。
では、この地域色が今回のリーグでどのように反映されたか?1つ目には、参加資格に制限を特に設けてない点が挙げられます。他の地方であれば、リーグが開催される地方のジムバッジを8つ*8手に入れることが出場条件になっています。そのため、誰でも参加できる大会では、ポケモンリーグというよりは地域のバトル大会みたいだという意見も見受けられました。4つの島で大試練を全て達成した人に参加資格を付与する選択肢もあったのでしょうが、アローラリーグ自体が第1回であるため多くのトレーナーに参加して欲しいこと、バトルロイヤル→決勝トーナメントという方式であってもアローラチャンピオンを選定することは可能であるという判断が働いたと見ています。
2つ目としては、グズマさんやスカル団に対する観客の反応です。グズマさんが率いるスカル団は、アローラのあぶれ者達で構成されるギャング集団です。彼らの中には、アローラの島風土に馴染めなかったり島巡りで挫折した者が多くいます。アニメ本編・ゲーム内でもスカル団というのは忌避される存在です。
アローラ地方にはスカル団のような存在を生み出すバックボーンがあります。それに対する完全な回答はなく、受け皿となっていたのがグズマさん率いるスカル団です。準決勝でボスたるグズマさんが大きく変わり、ハラさんをきっかけにアローラの人々から一定の評価を得られたことで、今後少しずつでも変わってくるかもしれません。
終わりに
アローラリーグは、サトシ君が優勝した上にククイ博士やカプ・コケコにまで勝って完全勝利するという過去に例を見ない快進撃となりました。
セキエイ・ジョウト・ホウエン・シンオウ・イッシュ・カロスとサトシ君が辛酸を舐めてきた場面を見てきた身としては、感慨深いものがありました。
各地方のリーグには、それぞれの面白さ・欠点があると思います。フィールドやバトルの多様性、観客と一体となって作り上げるクライマックス、ライバルとの因縁・カタルシス、舞台からの去り方などリーグによって様々です。こうした要素を踏まえても、今回のアローラリーグはアローラらしさをいかした挑戦をすると共に主人公サトシを始めとするあらゆる参加者のバトルを熱く描いてくれたと思ってます。本記事では取り上げきれなかったバトルも含めて全試合において対戦当事者のスタイルが色濃く出ていました。
最後になりますが、願わくば次回大会でリターンマッチに応じるサトシ君や再出発したグズマさん、 悔しさをバネに強くなったハウ君の雄姿をみたいところですが、まずは新シリーズを楽しみたいと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。質問・感想・意見等がございましたら、twitter @Onigohri_362 までお願いします。アローラ!